Medical Aroma Therapy &Botanical Life

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ラベンダーのトリビア 6選 

小論文「薬用植物としてのラベンダーの変遷」を終えて

お恥ずかしながらの小論文の中よりトリビアとして6選に凝縮しました。
ラベンダーは、「精油の万能選手」とか、「一家に1本持ちたい精油」とよく言われますが、いざ選ぼうとすると、たくさんの種類が販売されていてお悩みの方も多いのでは、と思います。品種によって期待される効能やお値段も違いますので、その辺の蘊蓄も合わせてお伝えします。

◆ラベンダーのトリビア その1 ラベンダーの語源は?
地中海地方、中東、インドを原産とするシソ科ラバンデュラ属の常緑性低木です。ラベンダーは「洗う」という意味のラテン語「ラウォー」(lavo)が語源で、古代ローマ人やプロバンス地方の人々が洗濯物やお風呂の香りづけとして用いられていたとされています。

◆ラベンダーのトリビア その2 ラベンダーの薬用植物としての歴史は?

現存する書物としては、1世紀、ギリシャ出身のローマの医師・ディオスコリデスが著した「ディオスコリデスの薬物誌」に見ることができます。
「STOICHAS Lavandula stoechas シソ科ラベンダー属の植物。
ストエカスはメッサリアに面したストエカデス諸島と呼ばれるがラディアの島々に生育しており、この島の名からこの薬草の名がつけられた。それは、細い小枝をもつ薬草で、タチジャコウソウのような毛があるが、葉は長く、味は辛くてやや苦みがある。その煎じ汁はヒソップのように胸部の痛みに聞く。これを解毒剤に配合しても有効である。」(3巻 31)
香りづけ以外にも薬用として、ワインやお酢に漬けて、脇腹や腱,神経の痛み,ひどい悪寒の解消などに用いられていたとも記されています。

どうやら、紀元前、プロバンス地方を植民したギリシャ人が持ち込んだようで、その品種がこのストエカスラベンダーだった模様です(写真一番下)。南フランスにラ・バンドゥーというリゾートタウンがありますが、そこに面した島々はストエカスラベンダーですっかり覆われていたらしく、地名からも、ラベンダーが繁茂していたんだなぁ・・と思いを巡らすことができます。

◆ラベンダーのトリビア その3 標高によって品種も成分も違う
どんな植物も環境に適応して生き抜くために、すさまじい生存戦略を仕掛けています。
薬用植物としてのラベンダーは、大きく4系統=アングスティフォリア系、ラバンディン系、スピカ系、ストエカス系に分類されます。
系統により当然、成分や香りも違います。ということは、期待できる効能も変わってきます。
一般にドラッグストアなどでお馴染みの香りの入浴剤や柔軟剤、洗濯洗剤などは、おそらくラバンジン系をベースに化学合成された香りだと推測します。なぜなら、紫の部分がエステル類といって、鎮静作用が期待できる成分が含まれ、なおかつ、量産できる品種だからです。フランスで流通している大半がこのラバンディン系と言われています。
興味深いのは、このラバンディン系で、いちばん標高の高いところ(標高1000m以上)に適しているラベンダー・アングスティフォリア(実はラベンダー精油の中で一番貴重で高価)と、標高500~800mの中腹に適応するラベンダースピカの中間に生育する品種で、昆虫を介在して自然交配した品種です。高価なアングスティフォリ種よりも花穂、枝ともに大きく成長し、高さは1mと大型で、一つ株から200本近く採れるため、抽出される精油の採油率が高く栽培の規模も著しく拡大。主に香水やオードトワレ、石けんの香りづけなどの製造用として栽培されました。
さらにいえば、現在はその流通の過程で、業者が精油を安価に大量に供給することを目的に、 100%天然の精油に安価な精油や合成香料を加えて水増しして(「偽和(ぎわ)」 といいます) 当たり前のように販売されているようなので、日本でも「雑貨」の域を出ないのは、この辺に理由がありそう。。。
香りを楽しむなら許容範囲と思いますが、皮膚に塗布して使う場合は、この辺を理解した上で安全な品質の精油を選ばなければいけません。

さらにオタク情報として^^;は、この品種は、交配種の特徴として種子がないため挿し木で増やします。

(参考:フレグランスジャーナル社「香料植物の図鑑」、原書房「香料文化誌」、「誰も言わなかったアロマテラピー」)

◆ラベンダーのトリビア その4 4系統ごとの期待できる効能について

・ラベンダー・アングスティフォリア・・爽やかな甘酸っぱい香り/アロマテラピーの万能選手
強力な鎮痙、神経鎮静、鎮静、筋肉の弛緩、血圧低下+++
神経症(太陽神経叢の痙攣)、不眠症、睡眠障害、苦悶+++
*1000mを超える高山にしか生えない野生の品種は、香り成分が150種類以上も含有されておりなんといっても貴重な精油で、今、見直されています。研究材料として用いられるのもこの品種で、研究に選ばれている精油会社も調べたところ限られています。
アロマテラピーの心理療法では、心のバランスを取るために精神的にも肉体的にも落ち着かせてくれる作用を期待して用いられる一つです。安全性が高く、これぞ、家庭に常備したい一つです。

ラベンダー・スーパー(ラバンジン系)・・スッキリした甘さのある香り/
強力な鎮痙、神経鎮静、鎮静、筋肉弛緩、低血圧+++
抗炎症、鎮痛++
*アングスティフォリアに似た作用が期待できます。
前述したとおり、今、最もポピュラーなのがこの品種でお馴染みの香りです。
お値ごろで作用は十分期待できますので、皮膚塗布して利用したい場合は
購入する際、品質に注意して選びたいですね。

ラベンダー・スピカ (スパイクラベンダー、野生ラベンダー)・・クッキリした野趣あふれる香り
抗カタル、去痰+++
抗感染、殺菌、(特に黄色ブドウ球菌)殺ウイルス+++、殺真菌、鎮痛
*スピカは、抗カタル、去痰など風邪の諸症状緩和や、日常のスキンケア、皮膚疾患のケアに向いています。傷口に希釈して塗ると治りが早いとよく言われいます。
アロマ仲間のお母さまが転んで顔面を怪我した際に、スピカを塗布したら3日で傷口がふさがったと驚いていました。たしかに、文献にもマムシやハチ、ぶよなどに効果があったというコラムもしばしばみかけます。
ただし、注意事項があります:乳幼児、妊婦、産婦、神経系の弱い患者(老人)は、低濃度で注意をして利用してください。

ラベンダー・ストエカス(フレンチラベンダー)・・古代ローマ人が薬用、化粧用として使用していた品種
抗カタル、粘液溶解+++
特異的抗感染(緑膿菌に対して++、ないし+++)
瘢痕形成+

カンファーという成分が多く、これは樟脳の香りとして知られています。
現在は、ニキビ、ヤケド、ダイエットなどに用いられていますが、精油を日本で用いられることは少ないかも。。。

しかも、こちらは禁忌事項があります。=ケトン類が多いため、乳幼児、妊婦(神経毒性が極めて強く流産惹起作用がある)、産婦、神経系の弱い患者(老人)は、低濃度で注意をして利用してください。

◆ラベンダーのトリビア その5 「アロマテラピー(Aromathérapie )(芳香療法)」の由来とは?
香料化学者のフランスのルネ=モーリス・ガットフォセが、実験中に大ヤケドを負い、ラベンダーの精油を用いたところ、傷が癒えたことをきっかけに、精油の効果効能について研究を重ね、「アロマテラピー(Aromathérapie )(芳香療法)」と命名したことに始まります。1937年同題名の書籍を出版して、この療法を世に知らしめたと、一般的に言われています。
ここからがトリビア!?多くの書籍で、みるみる治ったというニュアンスで載っていると思うのですが、
実際のところ、そのヤケドの度合いは一瞬火だるまになるほどの大やけどで、約3か月の入院を余儀なくされ、皮膚がガス壊疽まで起こしてしまった。そこで、ガットフォセ氏が思い出したのが農民たちが用いていたラベンダー精油による療法で、試してみたところ、やっと好転して、退院することができたとか。このことがきっかけとなり、精油の効能に強い関心をもち、研究を重ね、事故以来実に13年の時を経て「アロマテラピー(Aromathérapie )」を出版したそうです。ガット・フォセさんのヤケドについては、著者が直接ガットフォセさんのお孫さんに取材していらっしゃるのでこれが真相だと思われます。
(参考:『誰も言わなかったアロマテラピーの本質』髙山林太郎 著)

◆ラベンダーのトリビア その6
ラベンダー精油をベースに作られた「うつ」の薬が医薬品としてヨーロッパで売られている。

古来より人々がラベンダーを暮らしや医療に取り入れてきたことが文献や書籍を通して伝わってきます。近年、伝統の植物療法、とくに精油を用いた研究論文が数多発表されおり、補完代替療法として注目されています。
ラベンダー精油は、うつ病、不安、ストレスなど神経障害に関することの研究論文が多数発表され、なかでも注目なのは、ラベンダー精油(Lavandula angstifolia)を原料とするSilexan(シレクサン)という抗不安と抑うつ薬です。
ドイツの医薬品で、2019年時点で世界14か国で販売が許可され、シレクサンに関する研究論文も多数発表され、抗不安に対しての有効性も認められる結果が出ています。ちなみに、日本でもアマゾンで並行輸入で購入できる模様です。お買い求めの際は、説明書をよく読んだうえ、自己責任で服用していただくことになります。あらかじめご了承ください。
(©サブスレッショルド不安におけるSilexanの有効性 (2016年)ほか多数)


以上、ラベンダーのトリビア6選、いかがでしたでしょうか。
ドラッグストアにいけば、ラベンダーの香りと謳った商品がたくさん並んでいますが、
企業がこぞって商品化するのには理由がある=効果効能が素晴らしいということなんですよね。
まだまだお伝えしたいことたくさんありますが、この辺で。
最後までお読みくださりありがとうございます。

「ディオスコリデスの薬物誌」
紀元1世紀、すでに現在に通じる書籍が存在するなんて、スゴイ。右がラベンダーのイラスト
ラベンダー品種と精油成分
標高によって適合する品種が違い、さらに、精油成分や効能も違うんです。一般的に知られている香りは上から2番目の量産されているラヴァンジン系。メンタル系で注目されているのが高山にひっそり生えている野生種で貴重なアングスティフォリア系です。生産者が少なく、採取量も少ないのでお値段もお高めです。
ラベンダーは品種の見分け方
いちばん標高の高いところの環境で生育しているのがラベンダー・アングスティフォリアイラスト右。茎は1本で背も低いです。(真正ラベンダーともいいます)。抗不安などの研究材料としてはアングスティフォリアが用いられています。
ラバンディン(中央)三またに別れ、アングスティフォリア系の二倍の高さ、花の量、大きさも上回るため精油の採油率も高く、お値段も安心価格。香水や石けんなどでもお馴染み。
スパイクラベンダーは原種で、三またに分かれていますが、ラバンジンのど大きくないし、花の数も劣る。
(イラスト出典:ブルーダルジャン・ジャポン)
ラベンダー・ストエカス(フレンチラベンダー)
うさぎさんのようでカワイイので、今はもっぱら園芸種として人気。ディオスコリデスの時代にから薬用や香りとして利用されてきたのはこの品種と推測されますが、成分からみると実はメンタル系には不向きです。
ラベンダー精油を原料とする抗不安&抑うつ薬
ヨーロッパで販売されているSilexan(シレクサン)は、2019年時点で世界14か国で販売が許可されています。
2023/4/20